※この記事は、Speedcubing Advent Calendar 2017の企画として執筆したものです。
2017年10月25日に、Red Bullがスポンサーとして協賛するルービックキューブの世界大会、Red Bull Rubik's Cube World Championshipが開催されることが発表されました。
紹介動画はこちら。ドイツのトップキューバーの一人、Sebastian Weyerが紹介をしています。
Red Bull Rubik's Cube World Championship 2018 - Formats
Description: The Red Bull Rubik's Cube World Championship is a new, global competition designed to challenge the most accomplished Cube solvers, featuring a host of new play-modes and events to deliver the largest, most professional competition for Cube-solvers yet seen.
目次
レッドブル世界大会の概要
レッドブル世界大会は、これまで開催されてきた大会とは大きく様式が異なります。まだ公開されている情報はごく一部ですが、現在出ている情報をまとめると
開催場所
2018年1月より世界中17カ国以上(日本含む)で予選を行い、最終的にはその予選で勝ち抜いた人達でボストンでの世界大会を行うようです。来年1月には始めるといいつつまだ全く告知されていませんが、どうなるのでしょうか。
このように世界大会に向けて予選会を行うのは、1982年に行われたハンガリーでの世界大会以来です。
大会形式
通常の大会では一人ひとりタイムを測った上で、その平均値をとるなどして順位を決めますが、レッドブル世界大会では1対1での対決形式になるようです。よりエンターテイメント性を高めたような形式でしょうか。
開催競技
開催競技としては、純粋に解く早さを競う「Speedcubing」、片手競技の「Fastest Hand」、そしてスクランブルされたものと同じ状態のものを作る「Re-Scramble」の3つを行うことが公表されています。Re-Scrambleなんかは、遊びなんかではやったりすることもありますが、スピードキューブがそこまで早くない人でも上位に食い込めるチャンスがあるかもしれませんね。
ルービックキューブに関する2つの団体
ここで少し話は変わりますが、現在ルービックキューブに関する団体は大きく世界に2つ存在します。
World Cube Association(WCA)
現在世界中で公式大会として行われている大会は、「World Cube Association」、略してWCAが運営をしています。
ここで注意しないといけないのは、「World Rubik's Cube Association」ではありません。ルービックキューブというのは商品名なので、色々な問題があって簡単には使えないんですね。
WCAに所属する各国の団体は現在30ありますが、その中でもほとんどの団体が「Cube」や「Cubing」という言葉しか使っておらず、ルービックキューブという言葉を使っているのは日本、台湾、スロベニアと、ごく限られた団体のみです。
WCAに所属する団体の一覧
https://www.worldcubeassociation.org/organizations
日本の場合は「日本ルービックキューブ協会」(Japan Rubik's Cube Association)となっていますが、これは団体を作るときに日本でのルービックキューブの販売元であるメガハウスに許可を得ており、また日本大会など大きな大会ではスポンサーにもなったりするという、良好な関係が得られているからなんですね。
WCAもルービックキューブ販売元と仲が悪いというわけではないですが、正式に公認はされてない以上、「世界規模のサークル活動」というのが正しい認識かと思います。
Rubik Speedsolving Association(RSA)
一方で、WCAとは別に「Rubik Speedsolving Association」、略してRSAという団体があります(超余談ですが、RSAって聞くと一部の人には公開鍵暗号方式にしか思えないですよね)。
これは、ルービックキューブの発明者であるエルノー・ルービック氏が立ち上げた団体で、2017年の2月にできたばかりです。ハンガリーのブダペストで非営利団体として登録されています。
RSAに関する情報はとても少ないのですが、エルノー・ルービック氏が自ら書き込みをしているGoogle+があります。
そして、今回紹介したレッドブル世界大会の主催はこのRSAなのです。
Rubik Speedsolving Association (RSA)
education, collaboration, competition
レッドブル世界大会発表後の反応
RSAはまだできたばかりの団体なこともあり、活動実績としてはまだ何もない状態の中で、突如としてレッドブル世界大会の開催を発表しました。そしてWCAは、この大会の開催が発表されるときまで何も知らされていなかったようです。
レッドブル大会のルールや形式が通常の公式大会と大きく異なるのはこのためです。
レッドブル世界大会が発表された後、WCAからはその件についての表明が発表されました。
内容としては、WCAはレッドブル世界大会の開催について報告は受けおらず、また協力の要請もうけていないこと。しかし、WCAのメンバーがレッドブル世界大会に参加することで何か不利益になるようなことはないこと、などです。
(原文はこちら https://www.worldcubeassociation.org/posts/statement-of-the-wca-board-on-the-red-bull-rubik-s-cube-world-championship)
競技者の中には、RSAのこういったやり方に同意できず、ボイコットしようといったことも掲示板に書かれていたほどです(それをうけてのWCAの表明でもあります)
レッドブル世界大会に見るスピードキューブの今後
WCAが開催する大会においても、スポンサーをつけることは最近では珍しくありません。日本でもメガハウスやパズル専門店のtriboxがスポンサーとして賞金や副賞を用意したり、海外ではMoYuやYuXinといったキューブを作っているメーカーが積極的に大会のスポンサードをしています。
競技人口も大会規模も大きくなってきて、やはりなんだかんだお金はかかってしまうので、こういったスポンサーによる援助というのは今後もっと欠かせないものになるかと思います。
今回のレッドブルという巨大企業の参入も、必然といえば必然かとは思いますが、やはりWCAとは独立した団体が開催すること、また大会形式としても、スポーツとしてのエンターテイメント性を重視したものであり、記録を狙っていくといった類のものではないという特徴があります。
現状のルービックキューブの大会って、やっぱりエンターテイメントとしては全く面白くないですから。
例えるなら、WCAの大会は陸上競技連盟が開催する陸上競技大会、RSAの大会は筋肉番付とかSASUKE的なポジションでしょうか(この例えが合っているのかは知らない)。
スピードキューブをスポーツのひとつとして昇華させるためにはとても貢献するかと思いますが、スピードキューブの技術を高める、タイムを縮めるといった方面としてはWCAのほうが役割としてまだまだ強いかと思います。
そういった住み分けを理解したうえで、競技者は競技者として、スピードキューブを楽しめばいいのではないかと思います。
RSAの開催する大会は、スピードキューブの知名度を高めるという点で、今後必要になってくるものです。
最後に
日本での予選会の詳細はまだ何もでていませんが、いったいどこでやるんでしょうね。せっかくなら、レッドブルの莫大なお金を使って派手なところでやって欲しいなぁとか思います。
個人的には秋葉原UDXのAKIBA SQUAREとかだと凄く楽しそう。